慶応大とナビスタクリニックの研究によると、わが国のコロナ抗体陽性者は約6%だという(週刊現代5月16日号)。この値は米国の抗体検査データと同レベルである。このデータから、わが国の感染経験者数(その大多数は不顕性感染者)は760万人と推定された。感染者数や死者数は欧米の1/30でありながら、不顕性感染者は欧米並みということは、わが国に関してはこのコロナは欧米におけるほど危険ではないと考えてよいことになる。そのことを、5月9日の本欄で紹介した。
5月15日の新聞に、厚労省主導で1万人を対象に抗体検査を行うという記事が出た。ずいぶんと遅いことは否めないが、やるのならよいとしよう。しかし同じ記事の中に抗体の予備検査のデータが記されていて、都内500人と東北地方500人(計1,000人)のテストで、陽性者は5人とある。陽性率は0.5%なので、慶応大などのデータや米国の検査結果とはあまりにも違うのだが、その違いへの言及はない。この違いは今後の対策にとって非常に重要な問題であるのに、なぜ言及がないのか?
6月1日の新聞には、「簡易抗体検査 精度に課題」という記事が出た(読売)。コロナ抗体の簡易検査キット陽性だった人の約9割が、「大型機器による精密検査」では陰性だったという。大型機器による精密検査とは何の検査なのだろうか? 抗体の検査なのか、PCRなのか書かれていない。もし抗体検査だったら、今やっている簡易検査は無意味ではないのか。
わが国全体に、不顕性感染者の数(%)を知る必要性があまり認識されていないのが残念である。「パンデミックの第2波が来る」と言われているし、その可能性は十分にある。対策を練るにあたっては、不顕性感染者の%は非常に重要な基礎データのはずである。不特定多数の人を対象に抗体検査を行うことを、早くから企画して実行し続けることが重要である。最終的には、全国民のテストを行うのが望ましい。
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