私は京都大学理学部の物理学科を卒業したのですが、大学院は生物学に転じて、免疫学の研究を始め、その後はずっと免疫学を仕事として生きてきました。物理学を学んでなぜ免疫学なのかと尋ねられることがあるので、簡単に説明しておきます。
私はいわゆる天文少年で、京大へは天文学の研究をしたくて進学しました。しかし、この夢は入学後すぐに破れてしまいました。少し言いにくいことですが、当時の京大宇宙物理学教室はあまりよくなかったのです。あまり気乗りがしないまま物理学科へ進んで、学生時代は進路模索が続いていました。
免疫学に興味を持ったのは、(故)村松繁先生(京都大学名誉教授、当時は30歳ほどの若手研究者)に出会ったことによります。クローン選択説(F. M. Burnet, 1959)が提唱されて、欧米では免疫学が注目され始めていた時期であり、村松先生自身も免疫学へ転じようとされていた時でした。
その後、免疫学は驚異的に発達し、もはや医学の一分野ではなく、医学生物学全体にかかわるビッグサイエンスへとなっていきました。私自身は主にT細胞にかかわる研究、とくに胸腺でT細胞がつくられるメカニズムに関する仕事をしてきました。
このたび、「桂義元のページ」をつくってもらうことになり、免疫の研究やその周辺のことだけでなく、日ごろ考えていることなども書いてみようという気になりました。ほとんどは自分勝手なことですが、親しくしている方の目に触れることがあるかもしれません。少しはまともなことも書かなければと思っています。
なお、20年ほど前につくってもらったHPの記事を、少しだけ改訂して載せておきます。
(2017年5月)